構想2年制作1年!超巨大スクリーンが高3Cの教室に爆誕!数多の廃材を利用し、これまでみたことがない映像と没入感を追求したら、すごいことになりました!360度カメラで撮影した大迫力のアトラクションをぜひお楽しみください。またご来校記念に、一眼レフとiPadを駆使した放送部ならではの画像合成技術で、ありえない写真をチャチャッと作ってプレゼントします!

KONAN Viewer

我々放送部は、普段から映像や写真を撮影し、編集を行います。また講堂ステージのライティングや音響機器の操作を行い、行事ではグランドでアナウンスも行うなど、様々なオーディオビジュアル技術に触れることが多くあります。これらの運用や活動は、放送部の活動を行う上で、基礎的な技術の屋台骨となっています。

さて、これまでもVRを用いたバーチャルと現実の映像合成や、センサー技術によるモーションキャプチャーでの映像作成など最新テクノロジーを理解して、文化祭で発表を行ってきました。今回の文化祭の展示は3種類、「KONAN Viewer」「ありえない写真館」「写真の展示」です。

KONAN Viewerは、テーマパークでは有名なライドをイメージして制作しました。理想としては、直径5mの球体スクリーン、そこへ投影される6分割の高輝度なプロジェクター、可動式のベンチを覆うように設置され、ライドが動けば映像も乗員と共に動くような想定です。

当然そのようなものを作るのは難しいのです。費用面は元より、安全面、クラブ活動として利用が許されるスペースや専有時間など、計画当初は何一つ実現の見込みがありませんでした。しかしながら、どうにかして実現しようと構想し、最終的に今回のKONAN Viewerに至りました。

まず学校の大教室のAV機器を更新するときに廃材となったスクリーンを、こんなことを想定して保管しておいてくれた先輩には感謝しかありません。なぜか部室の天井のサンの上に転がっていたのを、偶然にも見つけてしまいました。聞けば2016年からとのことです。

そして球体スクリーンを作るに当たっては、天井裏の配線ケーブルを通すような軸になる鉄線で組んでみましたが、自重に耐えきれず崩壊。そもそも白い布での代替や半紙を敷き詰めて、青森のねぶた祭のような仕組みも検証してみましたが、やはり没入感を大事にしたいことから、製品である”廃材のスクリーン”には敵いませんでした。

何より大事なプロジェクターについても、なぜか8台も転がっているという幸運に恵まれます。甲南と普段AV機器でお世話になっている業者の方が、社内で不要の折にコロナ禍中の様々な事態を考慮して倉庫に保管しておいてくださったとのことでした。処分するのに費用も掛かるため、分解して構造を理解しないかと持ちかけられた暁に、その存在を知ってこのプロジェクトが始まることになったのです。数々の機材や技術、そしてアイデアをご提供くださった方々、そしてご助力を頂けた多くの中3面々、まずをもって本当にありがとうございました。

というわけで、結局スクリーンはどうしたのか?その他にどんなギミックがあるのか?などなど、説明して参りたいと思います。より解像度の高い表現方法を用いたくあり、以下よりスライドをご覧ください、画像をタップすると大きくなります。

いかがでしたでしょうか。これがライドの技術的解説です!本当に疲れましたw しかしこれでもまだ理想の3割型。これからもどうやってガチ本物を作ろうか、試行錯誤を重ねて参ります。最後編集後記のようになりましたが、制作過程の写真もご覧ください!


ありえない写真館

まず「ありえない」と呼ぶ理由は、写真とCG、そして教室で実際に撮影した写真の3つを合成し、現実には存在しない「写真」を作り上げることです。それなら「アプリで顔に耳をつけたり、Zoomの背景を変えたりすれば簡単じゃないか」と思うかもしれませんが、我々のこだわりは品質にこそあります。

そもそも放送部の一眼レフカメラは、「我らは甲南放送部~動画」を始め、体育祭や六甲登山など様々な行事で培った撮影の腕があります。最も得意分野なのです。今回は、広角レンズの夕焼けグランド、朝ぼらけのような雰囲気の中庭、中望遠で真っ昼間の校舎正面、そして超望遠を用いた関西風景の4つを撮影しました。

最初の工程 撮影からRAW現像

体育館の写真では、体育館に人を座らせたいと考えていました。丁度体育館に夕日が映える時間帯を狙い、六甲山よりも太陽光が高く、それでいて影が差しても不自然ではないようなタイミングを選びました。人物を合成したときに、目線や足の高さが不自然な位置にならないよう微調整を繰り返し、撮影ポイントも3階教室からグランド通路まで水平移動でベストな角度を探しました。意外にも18mmの広角レンズを用いて撮影しています。

左から、55mm中望遠、18mm広角1階、18mm広角3階から各々撮影。階によって建物の奥行きが異なる。

朝ぼらけのような中庭の写真は、ロケットを合成してSFにあるような怪しい光や爆炎がはっきりと見えるようなイメージだったので、これも夕方に撮影しました。校舎西館の向こうに日が落ちても、まだうっすらと校舎の細かいタイルが見える、真夏の下校時間間際を狙いました。実際には日が落ちてかなり暗く、校舎2階の渡り廊下の淵ギリギリに三脚を固定し、手ブレに注意しながらシャッターを切りました。

適切なカメラ設定を探りつつ、ロケット発車に最適な発射台を探す。

どの写真にしても、ただ撮っただけでは人の目を引くことはできません。RAW現像を行うことで、夕焼けの感じはかなり誇張された表現になりました。朝ぼらけのような写真は、元はどす黒い写真でしたが、RAW現像によって青っぽくなるよう調整し、ミステリアスな感じに仕上げました。ちなみにRAW現像とは「生」の言葉通り、カメラが電気的に処理した生の映像信号から、明るさや色調の調整を自分で編集して、ファイルに保存することを言います。ここまでが一番最初の工程になります。

2番目の工程 画像生成AIで「ありえない」を作る

次に、目からビームなど光源の素材、ロケットや爆炎、怪しく光るライトなど、多数の合成素材となる画像パーツを用意しました。しかしネットを検索してもイメージする画像は見つからず、著作権もあって使い辛く、CGでの自作では何パターンも作って試すには大変だったことから、画像生成AIの「Draw Things」を使いました。

初めてロケットの生成プロンプトを入力する。UnReal engineはゲームにおける高画質技術の代名詞らしい。

画像生成AIは人工知能の一種で、AIにどんな画像を生成してもらいたいか、英単語で指示文(プロンプト)を書かなければなりません。ところが、AIと人間(特に自分)が解釈する英単語には、微妙に意味の解釈に相違があるようで、中々思い通りの生成結果を得ることができませんでした。そもそも英単語の難しさよりも、頭でイメージした細かな描写から一言一句漏らさず言葉に表現しなおす作業は、想像以上に疲れる作業で困難を極めました。

何よりも大変だったのは、画像を得るのに膨大な計算を要することです。私たちが用いた第8世代のiPadでは、1枚につき3分から5分、バッテリーをその都度3%以上を消費します。6限終了時に30%を切ったiPadで大量の生成結果を残すには、同じ放送部の友達の協力が必要不可欠でした。しかしながら、私たちがゼロから描くよりも遥かに素晴らしい結果を得ることが出来ました。

2回目 かっこよさに一喜一憂
3回目 他の選択肢が見たく継続 
4回目 発射台がほしいと思った
10回目 NASAという言葉で炎を追加
15回目 ふらふらした線に悪戦苦闘
20回目 SF風が楽と判断
30回目? 劣化するロケットに絶望
40回目? 学習モデル変更のアドバイス
50回目? 原点回帰でなぜかいい塩梅。
?回目 散々試したあとで、プロンプトを原点回帰させて得た最終形態。

最後の工程 画像の合成(コラージュ)

最後の工程は、撮った写真と生成AIの画像の合成作業です。合成と言っても単に元の写真に生成AIの画像を配置するだけでは、現実的な存在感は得られません。物体が重なる位置の影、不自然に見えないような反射、煙の流動性など、多くの自然現象を描き足す必要がありました。この点も最新のPhotoshopに搭載されたAIサポート機能で実現可能と判っていましたが、部費が足らずに諦めました。

何度も手描きして練習を繰り返すうちに、SFっぽさを残すことで合成作業に掛ける時間を短縮できることがわかりました。一方で、より緻密な合成を行えば画像の情報量が向上し、見る人を楽しませることもわかりました。校舎正面の写真の木の葉が透けてその裏に人が映える感じは、それらを完璧に使いこなす放送部コラージュ技術の結晶と言えます。担当の放送部員にお声がけ頂き、気軽にご覧ください。

そして文化祭当日は、放送部を訪れた方々を撮影して、それらの写真にコラージュします。多くの人を処理することから、クロマキーを用います。自然には存在しない極端な色の背景=グリーンバックを用いて撮影すると、画像から人物だけの切り抜きが簡単にできるようになります。iPad、Apple Pencil、そしてアニメの制作現場でも大変有名な画像編集アプリ「Procreate」を用い、短時間でハイクオリティな合成画像を作成します。ここから先は、どうぞ現地にお運び頂いてお楽しみください!

(編集部注:未成年の生成AI使用は、条件付き利用として保護者同伴などが提唱されています。またAIの学習モデルが齎す著作権にも配慮が必要です。本校では、ICT専門スタッフがリスクの説明を事前に行い、使用中は同伴し、出力結果に応じて適切なアドバイスを行いました。)